「今年中に結婚しようネ」
な〜んて甘く語り合っていた次の瞬間、二人の脳裏にとある疑問が浮かんだ。
「具体的には何をすればいいんだ?」
沈黙。
「親への紹介」
「式場予約」
「新居探し」
「挙式」
それらのコンテンツには気が遠くなるようなギミックが組み込まれているのを知っていた。
しかもそれらを避けて通るわけにはいかない。
かといって、何から手を付けていいものやら
さっぱりわからない。
おまけに、資金がない。
驚くほど、資金がない。
考えれば考えるほど、ワシらの顔色は悪くなるばかりだ。
こんなメデタイ事なのに、どうしてこんなに青ざめた顔にならなきゃいけないのさ。
…とにかく、ヘコんでいても仕方がない。
ナントカしなければならない。
と、ひなの視界にパステルカラーの封筒が飛び込んできた。
「ロックハート城ブライダルフェアーのご案内」
おおッ!コレだよ、コレ!
ワシらは、出口のない迷宮から生還する方法を見つけた。
翌日、申込みハガキは無事に投函された。
それが、新たなる悲(喜)劇へのプロローグとも知らずに…。
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