第4章 : 運命の分かれ道 − あつし編 | ||||||
いよいよあつしがひなの親に挨拶にくるというイベントがやってきた。 X−dayは、9月5日。 ちょうどあつしが仕事が休みの日だ。 ひなの仕事が終わり、あつしに電話で連絡を取ってみる。 「あ〜、俺、まだ家にいる」 はい? 「だって、車ないし。家に誰もいないし」 ・・・うかつだった。 結局、あつしが自宅を出る用意ができたのは、午後8時を回った後だった。 「明日、仕事が終わったら行くよ」 「そうだね・・・」 翌日、9月6日。 ひなが仕事から帰って、いつものようにネットにつなぐ。 『応答がありません。モデムと電話線が接続されているか確認してください』の文字が出る。 ??? 何度やってもコレ。 両親と電話線を確認するが、原因がサッパリ判らない。 ひなは慌ててあつしに応援要請。 仕事が終わったあつしは、ひなの家の電話線をくまなく調べる。 「あ〜、線が1本、外れてますね」 かなり時間がかかったわりには、あっさりと直る。 さて、両親に頼もしい(?)姿をアピールできたことだし、ここらで一発かまそうとした時。 「ご苦労様」 「これで2人で晩御飯でも食べてちょうだい」 両親がにこやかに笑いながら、1000円ずつあつしに手渡した。 お小遣いを貰った上に娘もクレ!などと言える訳がない。 ワシらは2000円を握り締めて、びっくりドンキーでびっくりハンバーグを食べてきた。 ハンバーグは、ちょっぴり涙の味がした。 当初のX−dayよりも2日も遅れた9月7日。 今日こそは・・・、と気合いを入れるひなとあつし。 とりあえず手ぶらもどうかということで、ビールを1箱買うことに決定。 しかしここで、最悪の事態が起こった。 仕事が終わったあつしから、情けない声で電話がかかってきた。 「俺、お金持ってくるの忘れちゃった・・・。2000円ぐらいしかないよ」 「マジ!?」 「ビールも用意できそうにないし、・・・明日にしようか」 ・・・ぷちぃ〜ん。 ひなの中で何かがキレた。 「あたしが半額出せば買えるでしょッ!明日明日明日はもうヤメ! 今からお金持ってくから、ウチの近くの酒屋まで来てぇッ!」 かなり強引にひなが押し切り、近くの酒屋まで車で爆走。 で、着いてみたら、今度はひながお金を忘れてきたのに気が付いてとんぼ返り。 それでも何とかビールを用意して、2人はひなの家へと向かった。 しかしながら、ワシらには、親に突っ込まれたら困る話題が1つだけあった。 あつし、アルバイトなんだよね。 結婚生活を送るにあたって、安定した収入に重きをおくひなの両親に、 「いやぁ、俺、アルバイトなんですよ。いつ社員にしてくれるかは分からないッスねェ〜」 なんて、口が裂けたって言えない。 どんなに朗らかにカミングアウトしたとしても笑って済ませてくれるとは思えない。 両親に仕事について突っ込まれない事を祈りながら、ワシらは両親の前に座った。 「え〜、そろそろ結婚の事についてお話しようと思いまして・・・」 ビールを渡し、かしこまってあつしが言った。 「今まで付き合ってきたんですが、今年中にでも結婚をしようかと考えているんですが・・・」 「うん。いいよ」 父、快諾。 「ま、こっちの事はあんまり気にしないで、結婚の細かい事は2人で話し合って、いいように決めて?」 「はい、ありがとうございます」 あつしが頭を下げた。 「こちらこそ、こんな娘ですが、よろしくお願いします」 父があつしに頭を下げた。 母も、チョッピリ涙目であつしに頭を下げた。 あぁ、ひな、結婚するんだ。 急に結婚への実感が湧いてきた。 しみじみしているひなに、父が言った。 「今度は、お前があつしの家に挨拶にいかなきゃな」 「そそうのないよーにね」 「・・・え」 そう、感激に浸っているヒマはない。 今度はひながあつしの両親に結婚の承諾を得なければならないのだ・・・。 |
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ひなの両親から、いともアッサリと結婚の承諾をもらったひなとあつし。 だがしかし!あつしの両親に挨拶に行く2人にまたしても障害が! 次回「結婚への道」は「運命の分かれ道−ひな編」をお送りします。 |
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