第5章 : 運命の分かれ道 −ひな編


あつしがひなの家に挨拶に来た今、あとはひながあつしの家に挨拶に行くのみとなった。
X-Dayは、9月10日。
おりしも、台風18号が日本を直撃する日だった。
夕方になるにつれ強くなる雨足。

「・・・危険だから、明日にしてもいい?」
「そうだねぇ・・・」
「お互いの両親に、あんまり心配かけたくないし」

X-Day変更!

翌9月11日。
仕事が終わったあつしと一緒に、文明堂のカステラ持参で挨拶に行く。
とりあえず2階のあつしの部屋で待機していたひなの耳に、階下から声が聞こえてくる。

『昨日、来るんじゃなかったんかい?』
『台風の中、誠意を見せてくれるのかと・・・』

ひな、大ピンチ!?
しょっぱなから、印象激悪!?
文明堂のカステラじゃ償えない!?


目の前が真っ暗になって階段のそばでへたり込むひな。
しばらく話す声が聞こえた後、あつしが2階へ上ってくる。

「どうしたん?」
「イヤ、どうしたもこうしたも・・・」

ビビリまくるひなに、1階からあつし母が声をかけてくる。

「話するんなら、早く下に降りといで」

声の様子から見て、激怒しているようではないが、かすかに怒気があるような気がする。
このまま帰りたい気持ちを抑えつつ、ひなとあつしは1階の居間に向かった。

まさか今日来るとは思わなかったらしく、あつしの両親はくつろいだ格好で、あつし父は晩酌までしていたようだった。

「あ、あの〜、昨日はすみませんでした」

文明堂のカステラを渡し、ひなはとにかく謝った。

「ああ、いいのよ〜。あつしが連絡してこないのが悪かったんだから」
「まったくだ。お前1人で分かってたってしょうがねぇだろ?」

あつし父があつしに怒った

「で、話は何だ」
「え〜っと、そろそろ結婚しようかと考えてるんだけど・・・」
「それで?」

あつし父、超不機嫌。
ひな、ビビリまくり。
それでもあつしは一生懸命に両親を説得し始めた。
そして、話はいよいよ核心に近づいてきた。

「で、どうするんだ?嫁に来てもらうのか?それともお前が婿に行くのか?」

そう。
ひなは一人っ子、あつしは長男。
一番難しい問題だった。

「いや、そこまではまだ決めてないんだ」

あつしが控えめに言った次の瞬間。

「絶対に、婿には、やら〜んッ!」

あつし父、断言。
引きまくるひなとあつし。
こころなしか、あつし母も引きまくっている。
そして、追い討ちをかけるように、あつし父が言い放った。

「どうしても婿に行くのなら、二度とこの家の敷居は跨がせんッ!」

いったいひなにどうしろと・・・!?
だが、次の瞬間、何事もなかったかのようにあつしが言った。

「いいよ。敷居、踏んで入ってくるから」
「そ〜だよね」
はははははははははは。

朗らかに笑いあうあつしとあつし母。
思い切り不機嫌な顔で黙り込むあつし父。
どうしたらいいのかわからずにオロオロするひな。

そして、あつし父の意見に耳をかす事なく、結婚話はトントン拍子に進んでいった。。

「・・・どうしよう、あんな事言ってたケド」
「あ〜、気にしなくていいから。あの人はね〜、ゴネてるだけ。とりあえず文句言わなきゃ気が済まないだけだから」
「う、うん・・・」
「とりあえず、結婚はOKなんだから、今度は結婚式の準備を始めなきゃね」
「そっか〜、あと3ケ月だもんね」
はぁぁぁぁぁぁ・・・。
緊張と迫り来る期日に、あつしとひなは、軽くため息をついた。





両方の両親から結婚の承諾を得られ
喜びいっぱいのひなとあつし。
だがしかし!結婚式までの期日が迫りまくり
思わぬ誤算が2人を襲う!
次回「結婚への道」は「結婚資金の大誤算」をお送りします。

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