第9章 : 愛の巣作り大作戦


新居も決まり、親への挨拶も終了した今、ひなとあつしは新居への引越しを敢行した。
あつしは友人の綿屋からもらったコタツの下掛けを持ち込み、
ひなは100円ショップをめぐって時計やゴミ袋などの掃除用品を仕入れてきた。

「とりあえず、実家の荷物を少しずつ整理しながら運ぼう」
「そうだね〜」

お互い、自宅に帰って荷造り開始。
だがしかし、ワシらは大きな問題に直面していた。

それは、ワシらの部屋に存在しているブラックホール。
ブラックホールでの必要物資捜索は、かなりの困難を極めた。
物資が1つ発見されるごとに産業廃棄物と思われる物質が20ほど発掘される。

ひななんぞ、今までコレクションしていた香水の入った箱を取り出した途端、
その下から友人から借りっぱなしの「王家の紋章」が30巻出てきた。
そして、読み始める。

終わらねぇ!
全然、片づけが終わらねぇよ!


もっと始末が悪い事に、あつしなんかは仕事が終わるのが夜8時過ぎ。
仕事場から実家まで約1時間。
それから片付けと搬入作業を…。

無理。

何も、部屋の片付けばかりが引越し作業ではない。
新しい家具なんかも用意しなければならない。

とりあえず、家具類はひな宅で、家電類はあつし宅で用意することにした。
そんなこんなで、ひなの休日は県内中の家具屋とリサイクルショップ巡りに費やされるハメになった。
朝10時の開店には家具屋に飛び込み、帰宅はだいたい夜8時。

休日ってナンだ!
休むための日が休日ってゆ〜んじゃないのか!?


仕事に行き、帰ってきて実家の晩御飯の用意をし、引越しの荷物をダンボールに詰めて新居へ。
新居で荷物を整理して、新居の晩御飯の用意。
そして結婚式の準備。
その繰り返し。

過労死するって!

それでも、とりあえず新居に住めるようにしなければいけない。
食器棚やタンスを搬入してもらい、ゲタ箱やサイドボードなどの組み立て式家具をあつしが必死で組み立てる。
ひなは食器や服や靴を収納し、買ってもらった冷蔵庫に食材を詰め込む。
新居での生活に必要なものを書き出し、お互いに買出しに出る。

そうしているうちに体力も底を尽き始め、引越しの荷物の量は目に見えて少なくなっていった。
それでも家具と家電だけは何とか揃い、住むのには不自由しない家になった。
2人で暮らせる事がうれしくて、調子に乗って、しばらくぼんやりした日々を送る。

気が付くと、12月。
ヤバイ!
ワシらは慌てた。

実家のブラックホールがまだ残っている!

大慌てで新居に荷物を搬入するひな。
新居で片付けているヒマはない。
少なくとも挙式1週間前までに部屋を空け渡さなければ、親戚連中が大挙して押しかけて、
掃除もされていない実家のブラックホールで宴会を開かれてしまう。
ひなの両親も必死だ。
鬼のような形相でダンボールを運び出している。

そして、とうとうひなは、キレた。

判別前の荷物もダンボールに詰め込み、新居に運び込んだ。
居間の隣の部屋にダンボールの中身を空け、空いたダンボールを持って実家の荷物をひたすら詰め込む。
どうにか実家は空け渡せたが、新居にブラックホールが出現。

「ゴメン、あつし…」
「式が終わったら片付ければイイよ」
やさしい言葉をかけてくれるあつし。

・・・だが。
あつしの実家の荷物の半分も運び込まれていないというのは
紛れもない事実だったりする。




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とりあえず新居で人が住めるようになって一安心のひなとあつし。
だがしかし!次々と遅い来る結婚式の段取りが二人を襲う!!
次回「結婚への道」は「マリッジブルーって何ですか?(前編)」をお送りします。

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