第11章 : マリッジブルーって何ですか?(後編)


結婚式の準備は、最終段階へと突入していた。
現在12月半ば。
時期的にも全ての段取りが終わっていなければいけない。
式場との最終打ち合わせ…
そのX−Dayは12月16日だった。


12月9日:ブライダルフェアー

あつしの仕事が終わってから、慌ててブライダルフェアー会場へと向かう。
様々な展示品が並んでいて、その中から自分達の結婚式で用意する引き出物や料理などを選んでいくことにした。
料理、引き出物、送賓グッズなどをものすごい速さで決めていく。

そして、ウェディング・ケーキの前に来た時だ。
ひなは、パック料金に含まれている1万円のプラスティック・ケーキと思っていた。
が。

「俺、コレがイイ!」

あつしが指差すその先には…

生ケーキ ¥65,000

「マジで?プラスティック・ケーキじゃ嫌なの?」
「だってさ、本物のケーキ使わないんならケーキカットする意味ないじゃん!」

すごい勢いでプラスティックケーキに難癖をつけ始めるあつし。
隣にいるひなは、けちょんけちょんにけなされるプラスティクケーキに同情の眼差しとか送ってみた。

「俺、プラスティック・ケーキ使うなら、ケーキカットなんかしないぞ!

『あの親にしてこの子あり』

ひなの脳裏にそんな諺が浮かんだ。(「結婚への道−第5章」参照)
でも、ケーキカットのない披露宴も嫌だな。

「…わかったよ。生ケーキでいいよ」

さらば、1万円のプラスティックケーキ。
こんにちわ、6万5000円の生ケーキ。

そしてこの日、披露宴に必要と思われる物資の発注が完了した。


12月12日:司会の打ち合わせ

あらかじめ作成しておいた披露宴進行予定表を持って、ひなとあつしはBELLA-VITAへ向かった。
当日、司会を務めてくださるNさんが尋ねた。

「プロフィールとかはどうしますか?」
「あ〜、そういえば…」
「自分達、そんなに紹介するような立派なモノもないんですよね〜」
「転職とか多いし」
「大丈夫ですよ。そういう場合は「社会人として様々な経験をお積みになり…」ってカンジで紹介しますから」

ひなとあつし、目からウロコが剥がれ落ち!

「え!じゃあ、学校でサボってばかりって時は?」
「そうですね〜…「多くのご友人とともに充実した学生生活を過ごされました」って紹介しますね」

すげぇ!プロだよ!
そしてこの日、プロフィール作成用の用紙をもらって、司会者との打ち合わせが完了した。


12月15日:音響の打ち合わせ

数日もの間、四苦八苦し、眠りこけるあつしを叩き起こしながら選曲し、
編集したCDを持って、音響担当のIさんの待つBELLA-VITAへと向かった。

あつしは仕事の都合でどうしても抜けられないようだったので、とりあえずひなの単独行動だ。
CDを渡し、利用曲一覧表を見せながら説明をする。

「この、キャンドルサービスで使う曲なんですけど、フェードアウトが長くて、なおかつ音量が小さいんですよ…」
「あ、大丈夫ですよ。こっちで一度、MDに再編集しなければならないんで、その時にウマく繋げておきます」
「MDなんですか?」
「最近はだいたいそうですね〜。CDだと、どうしても破損の心配とか、持ち運びにかさばったりするじゃないですか」

なるほど、納得。
その日、音響の打ち合わせが完了した。


12月17日:装花の打ち合わせ

たくさんの花に囲まれて、何だか心がなごむひなとあつし。

「時期的にクリスマスですからね〜、それっぽい感じで花を飾っていきましょうか」

花屋さんのアドバイスを受けながら、花のカタログを見て飾ってもらう花を決めていく。

「…あの〜、そのケースに入っている花を3本ぐらい欲しいんですが」

ひなの指先には「青い薔薇」
披露宴でやる「新婦のお色直しのドレス色当てクイズ」の景品ワインに添えたかったのだ。

「あの花は、その時に問屋になければ無理ですね〜」

どうも話を聞いてみると、偶然売り出されていた所を発見して仕入れたらしい。

「珍しいですから、ちょっと仕入れは難しいかも…」
「じゃあ、あったらつけてください」

イヤ、本当は何があってもつけて欲しい。
『世界中を探し回ってくれ』と心の中でエールを送りながら、ひなとあつしは花屋を後にした。
その日、装花の打ち合わせが完了した。




「う〜む、何とか全ての用意が整ったようだ」
「あたしゃ、もう、クタクタだよ…」
「あとは最終打ち合わせだけだから、頑張れ」
「…お〜」
疲れ果てた上に発熱しているひなを抱えるようにして、あつしは家路を急いでいた。





ほぼ全ての段取りを終えたひなとあつし。
だがしかし!最終打ち合わせで出された1枚の書類が二人を恐怖のドン底に突き落とす!!
次回「結婚への道」は「夢と現実の狭間で」をお送りします。

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